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PTSDの子どもを支援する| 各症状にどう関わるか|「覚醒レベルの上昇」の場合

ここで話題となる症状がPTSDなどのトラウマによるものとは限りません。また、「外傷的なできごと」が去ってから1ヶ月以内に起きる症状はPTSDと呼びません。それ以降に症状が示される場合のをPTSDと呼びます。
PTSD症状であってもなくても、お子さんの近くにいる保護者や支援者がお子さんにどのように関わると良いのかについて、間違いのない関わり方に限定してお伝えしています。
この記事は、2011年10月21日に東日本大震災後のこどものこころのケア支援のための専用HPで掲載されたものです。それを再構成しました。

PTSD症状の一つに、「覚醒レベルの上昇」があります。「興奮のしやすさ」「浅眠の睡眠障害」「警戒心の増加」などが、これに当ります。

このこと自体は珍しいことではありません。普段とは違うイベントなどがあると、妙にはしゃいだり、なかなか眠れなかったりすることがあります。妙にはしゃぐことは、「興奮しやすさ」ですし、なかなか眠れないというのも「浅眠の睡眠障害」に近いものです。

快適なことを想像して、興奮しているわけです。この感覚は「わくわく」です。

一方、不快なこと、とくに恐さや不安から興奮し「覚醒レベルが上昇」している状態が、「びくびく」や「どきどき」です。ここでの「覚醒レベルの上昇」とは、これを意味します。そして、このことがいつまでも続いていたり、ある時期から急にこの様子が見えてきた場合が問題になります。

でも、この2つはどこか似ています。似ていることは、刺激に敏感になる点です。

この「わくわく」と、恐いことを考えて不安になる「びくびく」や「どきどき」は、生理反応として刺激に敏感になる点では、大きくは変わらないのです。

災害が起きた後、「活発になった」「元気になった」と見えるお子さんを結構見かけました。妙にはしゃぐこと、活発になること、一見良いようですが、とても辛いことや恐いことを体験した後で、妙に活発になることや、はしゃぐこと、ひどく楽天的に振舞うことなどは、危ういことなのです。

とくに、周囲が「元気だから良いだろう」「笑っているから大丈夫と受け取るのは危ういの です。周りに心配をかけないために、お子さんが必要以上に、元気に振舞っている場合すらあります。「怒りっぽい」ことや、「反抗的」になることも、「覚醒レベルの上昇」が背景にあります。でも、「怒りっぽい」ことや「反抗的」な場合は、大人に気づかれやすいのですが、元気になる方向での「覚醒レベルの上昇」は、問題として見過ごされることが少なくありません。

みどりの東北元気キャンプ事前研修会2016年5月 とけあい動作法研修の様子 撮影 小林正幸

1.基本的な構え…穏やかに、ゆったりと関わる

「覚醒レベルの上昇」という点では、ベースが一緒ですので、「怒りっぽい」場合や「反抗的」な場合と支援の方向は似ます。

刺激に敏感になり過ぎて行動を逸脱させやすく、怪我もしやすくなります。気もそぞろなのです。ですので、意識的にお子さんの様子を目で認め、お子さんの行動が適切な限りは、「それで良い」という視線を送るようにします。お子さんの視野に入る範囲にいて、お子さんが周囲を見渡したときに、大人の優しい眼差しがあるようにします。

不適切な行動や危険な行動は、躊躇せずに規制して良いのですが、お子さんがその行動をストップさせたときに、それで良いと承認することが大事です。

関わるときは、意識して、ゆったりと焦らずに余裕を持って関わるようにします。刺激に興奮しているお子さんのテンポが速くなっていますので、そのテンポに巻き込まれないようにしましょう。

なお、睡眠の問題は、別に扱いますが、基本的な関わり姿勢は、この項目も参考になさってください。

2.刺激に敏感になっていると感じた場面で行うこと

(1)大人の側が興奮を鎮めるモデルとなること

このようなお子さんと会話をするときには、ゆったりとしたテンポで話をするようにします。大人の側が、ゆったりと気持ちを落ち着かせて関わることが基本中の基本です。気持ちが焦っていたり、余裕を失っていると、お子さんはいつまでも落ち着きません

会話をゆったりとしたものにするコツは、話の終わり際のテンポを遅くすることです。声の高さも低いものにします。低い声でテンポを落とすこと、とくに話の終わり際に、それを意識します。

関わる側の呼吸の具合に、注意を払うようにしましょう。呼吸が速くなってはいないでしょうか?お子さんを急かせたくなるときは、大人の呼吸のテンポが速くなっていることが多いのです。何かを声かける寸前に、一呼吸置いてから声をかける癖を付けます。

これらのことは、気持ちの落ち付け方のモデルを大人が見せていることになります。

(2)「とけあい動作法」「呼吸法」などでリラックスさせる

とけあい動作法】

お子さんに触ることが許される関係であるなら、手のひら全体で、肩や背中に触るようにします。これは、落ち着いて活動に取り組んでいるときに、「それで良いから」と、皮膚接触で伝えて行く方法です。この触り方は、「とけあい動作法」の手法ですが、10分ほどで簡単に覚えられる方法です。これは、怒りが収まったときや、活発に動くことが収まったときにも使うことができます。

警戒する様子や不安に感じる様子が見られるときも、優しく触り、落ち着いた声で「大丈夫だよ」と声をかけます。

今はコロナ禍で対人距離を取らなければなりませんので、しばらくは用いられない方法ですが、感染の懸念がなくなった段階では、この効果的は手技は、復活させたいと願っています。

【呼吸法】

息をゆっくりと吐くことを重視します。肺の空気を出しきったと思ったところで、スタートします。基本は吸い込む息よりも、吐く息を長くすることです。7つ数えながら、息を鼻から吸い、吐くときには、口をすぼめて10数えながらゆっくり吐きます。・・・これを繰り返す方法です。

呼吸は自分の意志で調節できるものですので、「気持ちを一緒に落ちつけよう…」と、大人と一緒に行うと良いでしょう。簡単に興奮を鎮め、覚醒レベルを下げる優れた方法です。

3.興奮が静まった場面で行うこと

刺激で誘発された興奮が静まり、気持ちがゆったりと落ち着くこと、そのことがいかに居心地が良いことを実感できるような言葉をかけます

「静かな気持ちって素敵だね」
「落ち着いてみる(ゆったりする)と、何だか心地よいねー」

遊興的な楽しさや興奮で、憂さを忘れるのではなく、まったり、ゆったり、リラックスすることの心地よさを一緒に感じるようにします。関わるときの声の調子も、ゆっくりにし、落ち着いた低い声にするようにします。

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ABOUT US

cocorocare大学教授・NPO法人元気プログラム作成委員会理事長
NPO法人元気プログラム作成委員会理事長。カウンセリング研修センター学舎ブレイブの運営をしています。大学で教育臨床心理学を教えています。教育相談の面接を35年以上してきました。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、カウンセリング心理士(認定カウンセラー)です。カウンセリング心理士のスーパービジョンの資格もあります。臨床経験ですが、1時間の対面相談だけでも2万時間以上の面接を重ねてきました。 一緒に悩みの解消を考えていくカウンセリングスタイルが基本です。市町や学校単位で不登校を減少させる取り組みも18年ほど取り組んできました。クライエントさんの意志を尊重しつつ、必要とあれば、PTSDの解消にはEMDRを用いたり、アクティブテクニックとして認知行動カウンセリングを用いたりします。