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被災直後から小学校の先生ができること(5):以前より攻撃的、以前より落ち着かない

「小学校の先生ができること」の記事は、東日本大震災発生時に記載したものです。一連の記事は、子どもに強いストレスがかかった場合の対処方法を年齢段階別に示し たものです。これは、「小学生の子ども」向けの記事「以前より攻撃的/以前より落ち着かない」をリライトしたものです。すべての子どもに関わる教育の専門家である小学校の先生向けです。災害時以外でも、生かしていくことができると思います。

たとえば、事故や事件に巻き込まれてしまったとか、大病で急に手術をするようになったような場合で、そのことが起きて数か月以内の関わりです。

【状態】以前より攻撃的、以前より落ち着かない

災害など、大きくて辛いことが起きた後で、以前よりも、子どもが怒りっぽくなるなど、攻撃的になることや、落ち着かなくなることがあります。これは、覚醒水準が上昇したことによります。

人に限らず全ての動物は、生命の危機に陥ったとき、大きく3種類の反応を示します。3つのFのストレス反応と言われす。3Fとは、闘争(Fight)、逃走(Flight)、凍りつき(Freeze)です。この3Fを駆使して生存を高めようとします。「以前よりも攻撃的でイライラすることや落ち着かなくなる」のは、闘争(Fight)や逃走(Flight)をしたいと強く感じた体験の記憶の名残りと考えられます。

何とかしなければ」と焦ると、「あれもしなければ、これもしなければ」と活発に動きたくなります。頭が散らかった状態になります。忘れ物が増えたり、うっかりミスも増えます。全体として、落ち着きが失われやすいのです。

安伦 李によるPixabayからの画像

【関わり】

感情表現を手伝ってください

感情を表現したり、欲求不満を解消したりする機会が必要です。
感情表現を手伝ってください。

「今、投げたのは、わざとじゃないよね」
「悔しいんだ。腹も立つし、悲しいね」
「イライラしているね。嫌なんだよね」

子どもにゆっくりと近づき、そっと肩に手を置いてください。

子どもが動きが収まったら、「落ち着いた。よかったね」と優しく声をかけます。「とけあい動作法」の触り方で子どもの肩の部分にそぉっと触れて、手のひら全体でやわらかく、軽ーく押したり、緩めたりして、筋緊張を解くこともできます。

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「とけあい動作法」;肩に上手に触ることで安心感を与えるトレーニングをしている支援者:東日本大震災で被災した子どものこころのケアのための「みどりの東北元気キャンプ」での支援者向けトレーニング。手指消毒をしっかりして、マスクを両者がしていれば、コロナ禍でも肩のとけあい動作法を用いることができるかも知れません。

集団全体が落ち着きを失っているような場合

全員を閉眼させます。

自分の内側にある感情を気づかせるようにしても良いかも知れません。

「イライラしている自分や怒りを感じますか?それを感じる人は手を挙げてください。・・・はい、ありがとう」

イライラする気持ち怒りは、大事です。他の人が変わってほしい。今の状態が少しでもよくなってほしい。自分がもっと良くなりたいと強く願うので怒りは出てきます」

「悲しみや寂しさを感じる自分がありますか?それを感じる人は手を挙げてください。・・・はい、ありがとう」

「悲しみや寂しさは、誰かに助けてほしい。誰かと一緒にいたいという願いがあるので悲しみや寂しさが出てくるのですね」

▶「不安(心配)や恐さを感じている自分がありますか?それを感じる人は手を挙げてください。・・・はい、ありがとう」

▶「心配や恐さは、一番大事です。先を想像してよりうまくやっていきたい。辛い目に遭わないようにしたいと願うから、それが出てくるんですね」
などなど、感情とその背後にある欲求に気づかせてください。

▶「その感情は身体のどこで感じますか?・・・・感じられた人は、感じるところに手を置いてみてくだい。」

そして、開眼させます

▶「皆がいろいろなことを、たくさん感じているということが分かりました」

▶「感じていることは、感じていいんですよ。」

▶「何かを感じることは、何かを願っているからなのです」

「何を願っているのでしょうか。その願いを言葉にできますか?」

「これから紙(付箋)を配ります。その願いを自由に書いてください。」

それを回収し、その後の教育活動に生かすようにします。

上記の願いに記載されていたことに限らず、集団の落ち着きを取り戻した段階で、全員で遊べるルールのある遊びを学級活動などで実施することを考えます。

解説】
不快な感情のうち、イライラや怒りを扱うことは、集団を扱う教師にとっては、難しく感じる課題です。集団にとって、それは安心感や安全感を殺ぎかねない不快感です。教育活動の邪魔にもなりやすいものです。それを抑制したくなります。ですが、抑制しても気分に変化は起きません。

しかし、怒りに限りませんが、不快な感情には、その背後に強い他者に伝えたい要求があります。とくに怒りは「状況や他者に変われ!」という願いが強くあり ます。その要求・願いを見通して関わることが基本です。

このように伝えると、「行動を許すのか」とか「甘やかすのか」との疑問が良く出ます。それは違います。行動を許すことを許容と言います。感情を受け止めることを受容と言います。受容をしても、許容はしません。

なお、怒りやイライラの感情は、実は、問題の解消に近づきやすい感情です。背後に明確な欲求、願いがダイレクトに表現されているからです。3Fの「凍りつき」の記憶の名残りがある場合では、「感情を感じないようにします」ので、何を願っているのかが本人にも意識できず、ふわふわした感じになってしまいます。その分、適格に関わるのが難しいのです。

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ABOUT US

cocorocare大学教授・NPO法人元気プログラム作成委員会理事長
NPO法人元気プログラム作成委員会理事長。カウンセリング研修センター学舎ブレイブの運営をしています。大学で教育臨床心理学を教えています。教育相談の面接を35年以上してきました。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、カウンセリング心理士(認定カウンセラー)です。カウンセリング心理士のスーパービジョンの資格もあります。臨床経験ですが、1時間の対面相談だけでも2万時間以上の面接を重ねてきました。 一緒に悩みの解消を考えていくカウンセリングスタイルが基本です。市町や学校単位で不登校を減少させる取り組みも18年ほど取り組んできました。クライエントさんの意志を尊重しつつ、必要とあれば、PTSDの解消にはEMDRを用いたり、アクティブテクニックとして認知行動カウンセリングを用いたりします。