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不登校の深刻化を防ぐ:感情面の悪化

不登校になった結果、不登校は継続する

いったん、不登校が始まると、新しく不登校を継続させるメカニズムが生まれます。そのために、不登校が本格化し、問題が長期化しやすいのです。

これから、そのメカニズムを、感情面、行動面、思考面の三側面に分けて述べますが、ここでは、感情面での悪化のメカニズムを述べます。

ただ、ご注意いただきたいのは、これらは、一人の子どもの中で同時に起きることをお話している点です。そして、それらの悪化が複合的に欠席を続けさせるように相互に悪影響を与えます

感情は理屈ではありません

感情は理屈ではありません。頭で納得できても、感情が許さないことは数多くあります。それだけ、感情の影響力は計り知れないものなのです。感情は、脳の中でも、比較的古い脳で生まれます。古い脳で生まれるといっても、人間にとっては、人間を人間らしくする最大の特徴があるのが感情ですし、人間の欲求をダイレクトに反映するのが感情なのです。

感情面の悪化のメカニズム

その感情の変化のメカニズムは、行動や考えが変化するメカニズムとまったく異なっています。

不登校が始まる前、ほとんどの子どもは、学校で不快な体験を味わっています。そして、不登校が始まると、登校しようとする度に、その不快に感じた体験を思い返し、不快感を追体験します追体験が重なると、そこで思い返される体験の記憶から起きる不快感は強くなります。これが感情が変化する際の基本的なメカニズムです(不快な体験の記憶の想起による不安の増大)。

それだけではありません。不快には感じていなかった場面ですら、不快に感じるようになっていくのです。不快に感じながら、学校のさまざまな場面を思い出します。すると、そのときに思い出した記憶の中の体験と不快感とが結びつくのです(不快な感情を感じる場面の般化)。

さらに、複雑なのは、感情の学習メカニズムでは、過去の類似した感情体験が、感情の学びに影響を及ぼすことも少なくないことがあります。不登校のきっかけとなった出来事と、過去に味わったことと似た体験があったとしましょう。そのようなときに、次ののようなことが起きやすくなるのです。過去に感じた不快感の記憶が連想される形で、現在の不快感を強めてしまうのです。今の体験で起きた不快感と過去の体験の記憶から起きた不快感とが重なるのです(過去の類似体験の想起による不快感の増大)。

たとえば、実際に、その子ども自身が叱責されたわけではなく、別の子を叱っていたのに、その教師を恐がり、嫌がるようなことがあります。保護者から厳しく叱責された体験や夫婦喧嘩などで大きな声が恐いと感じたことがあったとしましょう。その後、教師の叱り言葉や声がそれと似ているような場合、その教師の叱責と親の叱責や夫婦喧嘩のときに聞いた大声で感じた脅威とが重なります。そのために学校の教師を非常に嫌がるような場合があります

あるいは、ちょっとしたトラブルがあって、その日のうちに問題が解消したのにも関わらず、翌日から登校してこないような場合もあります。その場合は、過去の類似の体験で、もっとひどい、たとえば、いじめられた体験があったとします。そのために辛い思いを味わったので、その辛い体験の記憶が、今のちょっとしたトラブルで生じた不快感を大幅に増大させてしまう場合もあるかも知れません。

このような場合では、最近に起きた出来事を思い出す度に、その出来事よりも過去の体験で生じた不快感が、今感じている不快感の上に覆いかぶさってくるのです。

不登校の最初の段階では、朝、学校に行こうとすると、当然、学校での不快な場面を思い出すわけですが、そのことで、日々、そこで感じる不快感が増大していくのです。何かを思い出して、不快に感じることが、不快に感じる程度を強め、不快に感じる対象を広げていきます。

そして、欠席したことが、新たな不快感を生み出します。「学校に行かなければならない」と考えている場合ほど、欠席という結果を失敗と考えます。それを失敗だと考えるほど、そのことが新たに日々の不快感を強めていくのです(不登校の結果が、不快感を増大させる)。

 このようにして、登校しようと思い出して感じる不安や恐怖は、最初に感じていたよりも何倍も強くなっていくのです。

 以前の記事で、不登校に関わるためには「不安を始め、さまざまな不快感が、子どものこころを支配していることを十分に理解する必要があります」と述べました。これを前提として関わらなければならないと述べたのも、この不快な感情の悪化のメカニズムを意識してのことなのです。

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ABOUT US

cocorocare大学教授・NPO法人元気プログラム作成委員会理事長
NPO法人元気プログラム作成委員会理事長。カウンセリング研修センター学舎ブレイブの運営をしています。大学で教育臨床心理学を教えています。教育相談の面接を35年以上してきました。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、カウンセリング心理士(認定カウンセラー)です。カウンセリング心理士のスーパービジョンの資格もあります。臨床経験ですが、1時間の対面相談だけでも2万時間以上の面接を重ねてきました。 一緒に悩みの解消を考えていくカウンセリングスタイルが基本です。市町や学校単位で不登校を減少させる取り組みも18年ほど取り組んできました。クライエントさんの意志を尊重しつつ、必要とあれば、PTSDの解消にはEMDRを用いたり、アクティブテクニックとして認知行動カウンセリングを用いたりします。