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子どものこころの成長を助ける保護者③要求を受けとめる

保護者が要求を受けとめる

2021年5月8日NPO法人元気プログラム作成委員会の総会が行われました。その後の正会員限定の研修会でお話したことに解説を加えて、4つの記事にしてお伝えする3つ目「③要求を受けとめる」です。目次は以下になります。

「③要求を受けとめる」の目次

子どもの不快な感情や身体感覚の背後に、社会的な要求(願い)を見出し、それを言葉にする

子どもに共感すること

こころの不調は、「自分の意図通りに、願うように振る舞えない」ことだと、述べてきました。それは不快感に圧倒されることや、その願いが過剰に強すぎるために起きます。

であるならば、子どもの示すこころの不調の表現の中に、どのような社会的な要求(願い)や意図があるのかを読み取ることが、その課題から抜け出すための最初のステップになります。

ところで、他者の表現に、他者の社会的要求や意図を見出す能力「共感」と呼びます。

約6000万年前のことです。 ヒトの祖先(原猿)が樹上生活を始めました。 「共感」の能力は、樹上生活の影響で原猿の時代から身に付け始めたと言われています。1800万年前サルと類人類が進化の中で分岐しました。サル(真猿)となると、集団生活をする種が増えました。類人猿では、オラウータン以外は、集団生活を送るようになります。

コミュニケーションのレベルで見ればこの段階でのコミュニケーションは、ジェスチャー表情発声でした。「表情」を動かすものが「情動」です。「言語」は用いていません。

集団は個体間にストレスを発生させます。そのストレスを下げ、親和行動を促進させるために多様な情動を獲得しました。若い類人猿は、遊ぶようになり、「声を出して笑う(laugh)」ようになります。

また,脳の容量も増加し、脳細胞単位では「模倣」と関連し、他者の行動を観察することで、自身が同じ行動をしているように感じるミラーニューロンを獲得していきます。他の個体の心を読みとる認知システム(心の理論theory of mind)を進化させていったのです。

集団生活が、次々と「共感」に関わるさまざまな能力を開花させていきました

これらは、「言語」を持つずーっと以前から6000万年もかけて進化し続けていた能力なのです。

この進化で注目したいのは、集団生活を選択し、仲間とのストレスを和らげ、うまくやっていくために「共感」を進化させていったのが、ヒトの祖先のサルや類人猿たちだったことです。

こころの不調を示す子どもでは、とくに、感情や身体表現の背後にある社会的要求(願い)や意図を読み取ることは、ストレスそのものを緩和するのに役立つのです。

この部分の話は、直観的に社会的な要求(願い)や意図を感知することを言っていることにご注意ください。保護者が言葉ではない部分で感知し、言葉ではない部分、つまり表情やジェスチャーで受けとめる部分のことを言っています。

子どもは、育ての親と、通常は生まれて以来、言葉を持つ以前から付き合っています。保護者の表情を見た瞬間に、保護者以上に、その表情や振る舞いからミラーニューロンを使って、保護者の言語以外の感情を正確に感知しているのです。

子どもの社会的な要求を直感的に感知したときに、こころのどこかで、「めんどうだ」とか、「うっとうしい」とか、「嫌だなぁ」の感情が生じたら、それは確実に子どもには伝わっているのです。

「おやおや、そう願っていたら、大変なことだなぁ」「そう願って、それができない(果たされない)と感じるとしたら、それはしんどいだろう」と心配するというのが、「共感」の基本になります。

サルでは、子ザルが助けを呼ぶと、母ザルは子ザルに走り寄ります。そのとき、近くにいる仲間は、母ザルの動きをじっと見守るのだそうです。その眼差しが「共感」なのです。

PexelsKlub Boksによる写真

子どもの社会的要求(願い)の言語化

言語は、限られた要素の組み合わせで、無限の状況・意味を表現できる体系です。

このような性質をもった体系は、地球上ではヒトの言語以外には見つかっていません。ヒトが「言葉」を持つのは、現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)が10万年から8万年ほど前に出現したと考えられ、今の言語に繋がるのは、5-4万年前とされます長い進化の過程から言えば、何とごく最近に「言語」を獲得したのです。

チンパンジーとヒトとが分岐したのが、800万年前ー700万年前(最近の研究で、DNAの変異にかかる時間に基いた推定によるものです)とされています。約400万年前に二足歩行を獲得していたのだろうというのが現在の通説です。「道具の使用」は二足歩行開始以降の300万年以上前の初期人類(アウストラロピテクス)が道具を使っていた可能性があるとされています。このように見れば、ごくごく最近に「言語」を使い始めたことが実感されます。

言語は、 無限の状況・意味を表現できる体系 です。「共感していることを言葉で子どもに伝えること」が、ここで言う「子どもの社会的要求(願い)の言語化」です。

細部に神が宿ると言いますが、大事なのは、その社会的要求(願い)を分かったことを、子どもがどのような言葉で、どのような保護者の心持ちで伝えてもらいたいと思っているのか、伝えてもらいたくないと思っているかまでを分かった上で、必要十分な言葉を与えるのです。

ですから、次のような表現は慎みましょう。これは、言葉の字ズラだけしか示せませんが、ゆったりとした口調で、間を持たせながら、断定的にならず、怒りの感情や嫌悪の感情がなく、暖かい心持ちが大事になるでしょう。

「〇〇したいと、言いたいんだ」と断定的に言わないようにします。心理学者のように行動を解釈するのは、冷たく感じます。
「〇〇と願うから、辛くなるんだよ。…それをやめるようにしたら?」とすぐに説得するのは、共感を伝えることではありません。

確かに言葉は、無限の状況や意味を表現できるものです。しかし、100%他者が願っていることを言葉で表現しきれるものではありません。あくまでも、それはこちらが推測していることで、そのごく一部分なのです。

第一、ご自分自身が何を願っているのかを、正確に言葉にするのは簡単なことではないでしょう。そして、自分では本当には気づいていない願いもあるのではないでしょうか?ですから、語尾は、推察や疑問文になるはずです。それが相手から否定されても一向に構わないという感じで語る方が良いように思います。


つまり、次のような語尾になるはずです。

「〇〇したくないということなのかしら?」
○○してほしいと言っているように見える(思える)んだけど、…違うかしら?」
「間違っていたら申し訳ないけど…ということなのかしら…」

子どもの要求(願い)の表明を評価するー受容する

言葉で子どもの社会的な要求(願い)を投げかけたときに、子どもが言葉で応えたら、その表現を喜びます。もちろん「○○してくれない」という言葉が本人から出てきたときでも、関わりは同じです。

ここで評価するのは、社会的に通じる手段である「言葉」を用いてそれを表現したことです。その願いが妥当か否か、適否などは、別の話です

「よく言えたねー」などと褒めることではありません。あなたが、「願っていることは、〇〇なんだね」としっかりとその言葉を繰り返します。そう伝えてもらって、願いがどこにあるのかが分かって嬉しいという感覚を抱きながら「なるほど」と、そのことを受けとめたことを表明するのです。これが受容です

本人の願いが否定的な願いの方向であった場合、「〇〇してくれない」には、「〇〇をしてほしいということなのかな?」と、より生産的な言い回しで聞き返しても良いでしょう。

「○○してほしくなかった」と言うようにそれが済んでしまったことの場合では、「残念だったね。・・・この次は、どうしてほしいのかしら・・・」と確認してても良いでしょう。

受け入れ可能な要求(願い)は充足するが、無理な要求(願い)は許容しない

以上をしっかり受けとめてから、その社会的な要求(願い)が充足可能であれば、その方向で考えます

しかし、充足が不可能なこと、無理な要求(願い)であれば、それを許容はしません。第一、それは難しいのです。にっこり笑って「それは無理」と言い、それについては、譲る必要がありません。クレーム対応についても研究し、いくつか本を出版していますが、これはクレーム対応の大原則です。無理なものは無理なのですから。

よく、「受容は甘いと言う言葉」を聞くことがありますが、それは受容と許容の区別が付いていない人の発言です。要求を受け入れることが許容です。受容は要求を受けとめることで、要求は拒否しても一向に構いません要求を拒否することは、存在の拒否や要求の拒絶ではないことが、子どもに伝わることが重要なのです。

受容と許容は違うのです。

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感想(2件)

願いの実現に複数の代案を選択肢として考え、子どもに選択させ、その選択を承認する

本人の願いが分かったところで、それが無理な要求の場合では、受け入れなくてよいのですが、しっかりと受けとめ、その要求を拒否します。

そのような場合では「〇〇は無理だけれども、AならOKだけど、どうだろう」「あるいはBでもよいのだけど、どうかな」「Cというのもありえるけど、それは社会人の大人の場合なので、それはないかなぁ」という具合です。肝心なことは、3案ほど示して、その一つは理想案で無理そうなものもいれます。本人が「そのどれもだめ」ということであれば、「では、無理だね。残念だけど…」と、すればよいのです。

また、本人の願いを受け入れる場合でも、その要求を満たすためには、どのようにしたらよいものかを一緒に考えます。

「こちらに手伝ってほしいことがあるのか?」「〇〇なら手伝うことができる」「☓なら手伝えるけれども…」と代案を複数与えます。このような場合は、「いずれも必要ない」との選択肢も含みます。

子どもが要求(願い)を社会的に認められる形で行動にしようとしたことは、結果を問わず高く評価する

こころの不調は、前にも述べましたが、不快な感情に圧倒されること、過剰な願いに圧倒されることで、自分の思い通りに動けないということで起きています

つまり、子どもが社会的な要求(願い)を社会的に認められる形で行動しようとする場合や、実際に行動した場合は、こころの不調からの脱出の一側面です。


本人が先走って失敗したときには、その試みを「よくやろうとした」と、その試みを評価したいところですね。残念がりながらも、評価するのです。

子どもが何かを得たこと(成功体験)を喜ぶ(ほめない)

本当に褒めるとは、本人がそうしてもらえて、そう言ってもらえて、本当に嬉しいと感じることが重要です。たとえば、100点を取って「えらいね」「凄いね」とのほめ言葉では、「100点を取るあなたは偉い」を意味するかも知れません。本人自身がそれを内心喜んでいるようなら、一番嬉しいのは、「良かったね」と喜ぶことではないでしょうか?

また、これは大変な変化球ですが、不登校の子どもが「そろそろ学校に行こうと思う」と言い出すときがあります。そのようなとき、「まだ早すぎる」「無理じゃないかなぁ」「本当に大丈夫なのかい?」「どうしても、というのなら止めないけど」と引き留める場合があります。本人が登校できそうだと思い、こちらもそう思うときほどそのように後ろに引っ張ります。

そのようなとき、本人が登校できたら、どう声をかけますか?


「え?、行けたんだ。驚いた!」そぉ。…見くびっていてごめんね。行けると思わなかったよ」「で、大丈夫?」…「だったら良かった」

本人との関係が良く、思春期以降の場合で、学校に行けそうだとこちらが思えている場合ほど、後ろに引き留めて、課題が成功すると、驚くようにするのです。思春期以降の子どもでは、何が一番嬉しいのかと言えば、関係のよい大人を出し抜く場合だからなのです。

子どもが何かが得られないこと(失敗体験)を残念がる

子どもが失敗をしたときや、うまくいかないとき、しっかりやれと叱咤激励をしてしまいがちです。あるいは、うっかり責めてしまうこともあるかも知れません。

しかし、一番がっかりしているのは、子ども自身です。

それは残念だったね」が基本になります。その上で、本人の頑張りが見えていたら、「頑張っていたと思うよ」「惜しかったね」などの言葉を添えても良いでしょうし、自分自身が似たような失敗体験があれば、当時の自分もいかにダメだったのかを失敗自慢のように語ってもよいかも知れません。その上で、「そういうときもあるよ」と収めてもよいでしょう。

学校の先生やスポーツのコーチなら、「自分では何が不足したと思う?」「そおか、よく気が付いたね」「だとすれば、どうすれば良いと思う?」などと応答していくのが、王道です。

しかし、親御さんは先生やコーチではありません。失敗が本人を否定するものではないということが、伝わることが大事なことで、本人の失敗を残念がるだけで十分だと思います。

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ABOUT US

cocorocare大学教授・NPO法人元気プログラム作成委員会理事長
NPO法人元気プログラム作成委員会理事長。カウンセリング研修センター学舎ブレイブの運営をしています。大学で教育臨床心理学を教えています。教育相談の面接を35年以上してきました。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、カウンセリング心理士(認定カウンセラー)です。カウンセリング心理士のスーパービジョンの資格もあります。臨床経験ですが、1時間の対面相談だけでも2万時間以上の面接を重ねてきました。 一緒に悩みの解消を考えていくカウンセリングスタイルが基本です。市町や学校単位で不登校を減少させる取り組みも18年ほど取り組んできました。クライエントさんの意志を尊重しつつ、必要とあれば、PTSDの解消にはEMDRを用いたり、アクティブテクニックとして認知行動カウンセリングを用いたりします。