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被災直後から小学校の先生ができること(1):混乱している

「小学校の先生ができること」の記事は、東日本大震災発生時に記載したものです。一連の記事は、子どもに強いストレスがかかった場合の対処方法を年齢段階別に示し たものです。これは、「小学生の子ども」向けのもので、元記事「何か起きているのか分からずに混乱している」をリライトしたものです。すべての子どもに関わる教育の専門家である小学校の先生向けです。災害時以外でも、生かしていくことができると思います。

たとえば、事故や事件に巻き込まれてしまったとか、大病で急に手術をするようになったような場合で、そのことが起きて数か月以内の関わりです。

【状態】 混乱している

お子さんが、何が起きたのが良いか分からずに、混乱していることを指します。

ここで述べる混乱は、起きたことが日常とかけ離れているために、恐さに圧倒されて、事態が呑み込めない場合も含みます

熊本地震では、次のようなことも起きました。その発振は深夜でした。子どもの中には、すっかり眠っていて、目を覚ましたら、保護者に抱きかかえられて、崩れた家の外にいた子もいました。目覚めたら世界が一変していたわけです。このように、何が起きたのかが分からない状況に放り出されることもあります

一方、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故ウィルスによるパンデミックの場合は災害を実感できせん。放射性物質もウィルスも、目に見えないのです。激しい地震の揺れや、津波などのように、目や皮膚感覚で感知できる激変がありません。それだけに、その正しいところを理解してもらうのは大変なことになります。

以上のような、何が起きたのかが良く分からない子ども、とくに、小学生の低学年の子どもや、特別支援学校のお子さんたちに起きていること理解し、上手に対処してもらうように伝えるのは難しいと思います。

このようなときに、頼りにできるのは学校の先生です。

日々、子どもと直接に接し、良く分からないことを分かるようにしていく工夫に余念がないのは、学校の先生なのです。専門家は学校の先生です。

【関わり】正確に説明し、絶対に守ると約束をする。

起こったことについて、わかりやすく説明してください。

子どもを怖がらせるような、細かい描写はしないでください。

差し迫った危険の有無について、子どもが十分理解していなかったり、混乱したりしている場合は、正しい情報を伝えましょう。

今回の新型コロナウィルス感染症についてですが、正しい知識を小学生に伝える教材として、「こどものための新型コロナウィルス感染症対策動画」 「コロタイジャー」があることをご存知でしょうか?

「えいせいレッド」「おもいやりピンク」「メタにんちイエロー」「めんえきホワイト」の4人のヒーローの活躍を通して、仲間と一緒に、コロナウィルスから身を守り、自身や周囲の仲間たちの身を守る方法を丁寧に伝えています。

解説「エビデンスに基づいた内容」では、以下のように記載されています。

コロタイジャーの世界観やストーリーは、公衆衛生学、発達心理学や臨床心理学などのエビデンスに基づいて作成されています。新型コロナウイルスを悪役コロナーとみなして、問題を「外在化」させ、人と人がもめるのではなく、人はコロナーに対して一緒に戦う仲間として設定しています。

【解説】「問題を外在化させる」ことですが、外在化(externalization)とは、自分のこころの内で起こっていることが外界で起こっていると感じたり、考えたりする心理的プロセスを指します。心理療法で問題の外在化することは、クライエントの問題を本人自身の問題として考えるのではなく、問題を切り離して自分の外部に設定することで解決を試みる技法です。
コロナに罹患した問題を、仮にその人の衛生意識の不足や不注意など個人の責任にするとしましょう。そうなると、自身が罹患をしたら自己否定感を生み出します。これが内在化です。身近な他人が罹患をすると、他者を責めることになります。
この教材は、より人とは異なる遠くの問題「ウィルス」に外在化させています。それも、それを人類撲滅を意図する悪役「コロナ―」としてイメージアップさせ、「コロナ―」を壊滅させる正義のヒーローと共に、個々の子どもたちが団結して闘うことを提案しています。
ウィルスの実際の脅威にはあまり触れず、子どもに過度な恐れを与えることを避けて課題に取り組ませようとしています
そのように考えれば、たとえば、他者と物理的に距離を取ることは、他者を忌むべき存在とみなすことではなく、他者の健康と自分の健康、つまり自他をウィルスから守ることを目指す行動ということになります。つまり、他者を愛するがゆえの行動と意味づけることもできます

静岡大学・法政大学・公益財団法人静岡県舞台芸術センター(SPAC)の有志による、子どものための新型コロナウィルス感染症対策動画「コロタイジャー」のサイトは、下部の画像にリンクが張ってあります。

このHPは、Covid-19の第一波が到達した2020年4月時点に作成されました。

著作権などに関してHPでは、以下のように記載されています。

学校等HPへの当サイトのリンク掲載、保護者へのメール配信によるご案内につきましては、特に許可は必要ありません。ぜひ多くの子どもたちのためにご活用ください。
なお、許可なく本サイトのコンテンツを編集することは止めてください。

↓ 「コロタイジャー特設サイト」に飛ぶには、以下の画像をクリックしてください。

みんなを守るために働いている人達がいること、必要ならさらに助けてもらえることを話します。

Covid-19の場合で言えば、このことで命を削りながら働いている人たちが大勢います。新型ウィルスの感染の恐れを抱きながらも、防護服を着て、病院で罹患した人たちに向き合っている医療者(医師、看護師など)、保健所のスタッフ、救急隊員などがいます

地震や津波、豪雨、豪雪、暴風、火災などでは、消防、警察、自衛隊、ライフラインの復旧、復興に携わっているさまざまな人たちがいます

その人たちがどのような仕事を何を目的とし、何を使命としているのかを伝えた上で、その活躍に感謝を示します(子どもに感謝させるのではなく、真摯に感謝の意を教師が述べます)。

そして、困ったときは、助けてもらえること、今後、周囲に困っている人がいたら、助けを呼べる人になることが、先生の願いであると伝えます。

次に起こることで予測できること、学校や生活など、これからのことについても話します。

これは、その学校の地域が、どのような状況にあるのかによって話す内容は違うはずです。当面予想できる変化や、その影響で普段の生活や学校生活がどのような変化が起きるのかについて伝えます。

ここで大事なことは、その災害が過ぎ去った後、復旧、復興の段階に入るであろうこと、つまり、未来のことを伝えることです。

Covid-19の場合、その先がいまだに見えません。けれども、いずれ訪れるポストコロナで、有為な人として働ける人になっていくこと、そこまで苦労して持ちこたえる際に大切にしていたことを礎として、他の人と手を携えて、復旧、復興、さらにはよりよい世界を、その未来のなかで担っていく時代の人になっていってほしいとの教師の願いを伝え未来、将来の夢を語るようにしましょう。これは、どのような災害でも共通することです。

話の最後に、必要な言葉があります

「先生が近くにいるときには、何が起きても絶対に守るからね」と結びます。

コラム:雑誌アエラの「放射能がくる」の社内広告と原子力災害事故の研修会の記憶
2011年3月のことです。東日本大震災発生後に生じた原子力発電所の事故についての研修会が開かれました。これは、臨床心理士会と精神衛生学会がボランティアで、緊急の心理相談の電話相談を東日本大震災の被災者のために立ち上げました。その開設に当たっての研修会の内容の一つが原子力災害事故に関するものでした。当時、私は「教師のための電子メール相談」を開設していました。そのために、電話相談を側面で支援する団体を主催していたので、お声がかかり、参加しました。
都内のネオンはすっかり消え、暗く、冷い雨が降っていました。研修会会場に向かう地下鉄車内には、自分以外には同じ車両に誰も乗車していませんでした。車内には、雑誌アエラの記事「放射能がくる」の広告が大量に貼られ、全車両の中で風に吹かれて踊っていました
研修会では、冊子「原子力災害時における心のケア対応の手引き」(財団法人原子力安全研究協会,2009年)を元に、今は故人となられた精神科医吉川武彦先生が講師として、その解説をしていただいくものでした。吉川先生がこの冊子の委員長でした。とても、懇切丁寧に正確に肝心なことをお話し頂けました。おかげで、「正確に間違いのない情報を知ること」…それが一番重要なことだと実感させられました。
いつもは、ほがらかに優しい笑顔の吉川先生でしたが、この夜の研修会では、憔悴しきり、悲しみと苦悩が色濃い表情でした。この夜の研修会の吉川先生のその表情は、今でも鮮明に記憶に残っています。吉川先生のその表情と、雑誌広告は10年経っても忘れられません。

地下鉄車内全体に大量に貼られていた広告…毀誉褒貶がかまびすしかった雑誌記事でした

【注】

一連の記事は、SARS-CoV-2ウィルスによる新型コロナウィルス感染症(Covid-19)のパンデミック災害の渦中(コロナ禍)を意識して書き改めているものです。2019年暮れに始まり、現在(2021年6月)も先が見えない中で、子どもに尋常ではないさまざまな過剰なストレスが長期にわたってかかっています。このことを意識して、順次、現状のパンデミックの様相に子どもに関わる支援者が応じられるように、全ての記事を意識して構成しています。

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ABOUT US

cocorocare大学教授・NPO法人元気プログラム作成委員会理事長
NPO法人元気プログラム作成委員会理事長。カウンセリング研修センター学舎ブレイブの運営をしています。大学で教育臨床心理学を教えています。教育相談の面接を35年以上してきました。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、カウンセリング心理士(認定カウンセラー)です。カウンセリング心理士のスーパービジョンの資格もあります。臨床経験ですが、1時間の対面相談だけでも2万時間以上の面接を重ねてきました。 一緒に悩みの解消を考えていくカウンセリングスタイルが基本です。市町や学校単位で不登校を減少させる取り組みも18年ほど取り組んできました。クライエントさんの意志を尊重しつつ、必要とあれば、PTSDの解消にはEMDRを用いたり、アクティブテクニックとして認知行動カウンセリングを用いたりします。