「小学校の先生ができること」の記事は、東日本大震災発生時に記載したものです。一連の記事は、子どもに強いストレスがかかった場合の対処方法を年齢段階別に示し たものです。これは、「小学生の子ども」向けの記事をリライトしたもので「自分を責める」です。すべての子どもに関わる教育の専門家である小学校の先生向けです。災害時以外でも、生かしていくことができると思います。
たとえば、事故や事件に巻き込まれてしまったとか、大病で急に手術をするようになったような場合で、そのことが起きて数か月以内の関わりです。
【状態】自責の念がある
「ぼくのせいで・・・」などと、自分に責任があったかも・・・と思ったり、「何かできたかも・・・」などと思い悩んでいる場合があります。
児童期の子どもは人生で一番真面目な時期です。その一方で、高学年になるまでは、まだまだ客観的に物事を理解できないところもあります。
それだけに、うまくいかなとき、「自分にも何か責任があったのかも」とか、「何かできたはずなのに」などと、思い悩むことがあるのです。
そして、そのような悩みを、打ち明けられずにいることもあります。
【関わり】
悩みを打ち明けられる機会を与えてください。
簡単な自由記述のアンケートをしても良いでしょう。たとえば、「私が今、困っていること」を書いてもらっても良いでしょう。
被災時のストレスを計測するために専門家が開発した尺度もあります。その中で、新聞記事にも掲載された5項目からなるアンケートが示されていたものがあるので、以下に紹介します。この調査項目の4番目を見てください。まさに、自責の念を尋ねる項目になっています。
ちなみに、この記事では、大阪で調べたコロナ禍の子どもたちのストレス反応は、熊本地震後の被災地域の子どもたちよりも、小学校の子どもたちと中学校の女子が高かったとしています。
なお、このような調査を行う際には、公認心理師などスクールカウンセラーと相談をした上で行ってください。子どもに負荷がかからないように、調査を行う適否を判断なさることをお勧めします。
ここで強調したいのは、災害後のストレス反応を見る際に、5項目まで絞った中に、被災した子どもたちは「自分が悪い」との考えを調べる項目が入っていることなのです。それだけ、多く見られる反応なのだと言えます。
なぜ、この自分を責める考えを調べることが重要かと言えば、この考え方は、抑うつ感、うつ症状と関連しているからなのです。この考えは、なかなか大人には話したがらない内容ですので、なかなか把握ができないことにも注意をしましょう。
アンケートなどは、その気持ちをそっと大人に打ち明けるための、あくまでも一つのきっかけになってもらえれば…との意味もあります。
全ての子どもたちに向けて語ること
全ての子どもたちに、以下のように語りかけてください。
「悪いのは人間ではありません」
「今回のようなことが起こると、どの人も自分が他に何かできたことがあったのではないか、何かできたはずなのに、と考え続けてしまうことがあります。
大人だって、そうです。そう考えてしまうことがあるんです。
でも、本当は、誰も悪くはありません。
悪いのは災害(コロナウィルス、地震、津波、豪雨…)なのです。
誰かが悪いなんていうことはありません。」
以上を「外在化」と言います。「外在化」については、「(1)混乱している」の記事の解説をご覧ください・
悩みを打ち明けてくれた子どもの感情と願いを承認した上で、自分のせいだとまで思う必要はないことも伝えます
ゆっくり話を聞く機会を持ちましょう。
「そう(あのとき、ああすれば良かったんだ)と思ってしまうんだ。そう思ったら辛いね(嫌だね、悲しいね、悔しいね、腹が立つね)」と感情を受け止めます。
「そう思うのは、『〇〇がなければよかった』(『〇〇であればよかった』)と願っているからなんだね」と本人が願っていることも受けとめます。「そう願うのはもっともだと思うよ」と、その願いを「それは尊いこと」と承認します。
その上で、「そこまで思う必要はないと思うよ」ということを、お子さんに分かる言葉で伝えます。
話の終わりに、「そのことを話してくれて、先生、嬉しかったよ。ありがとう。また、そんなふうに思うときがあったら、また、相談してね。お願いね」と、次の機会もあることを伝えます。
なお、この話をするときは、辛いことが起きた過去のときにどうであったかの話ではなく、その辛かった過去を、今、ここで、何を感じ、考えているのかに意識化させるようにします。過去の辛かった時点に舞い戻ってしまうのではなく、今のこの時点で、感じること、考えることに焦点づけます。
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